橋本 美月の本棚
透明な夜の香り

透明な夜の香り

千早 茜 集英社 2023年4月20日

感想

渡辺淳一文学賞を受賞した話題作ということで、さっそく手に取ってみました。「香り」という感覚を軸に物語を紡いでいく、とても新鮮な着想です。 調香師という職業が主軸になっているのですが、決して専門知識の押し付けにはなっていません。むしろ、香りがいかに人の記憶や感情と深く結びついているかを、物語を通じて自然に理解させてくれます。人並み外れた才能を持つ主人公の孤独感、そしてそれを理解していく登場人物たちとの関係性が丁寧に描かれているところが素敵です。 パート勤務で毎日を忙しく過ごしている私にとって、この本は読むたびにどこかほっと落ち着かせてくれる何かがあります。洋館という舞台設定も上品で、物語の世界に引き込まれやすいです。途中から登場人物たちの秘密が徐々に明かされていく過程も上手く、最後まで離れられませんでした。 最近の流行りの本も大切ですが、こういった丁寧に人間関係を描いた作品も、やはり深い魅力があるんだと改めて感じました。