まるまるの毬

まるまるの毬

西條 奈加

出版社:講談社 出版年月日:2017/06/15

講談社 | 2017/06/15

4.25
本棚登録:5人

みんなの感想

感想

職場の同僚が勧めてくれた本です。話題の吉川英治文学新人賞受賞作ということで、つい手に取ってしまいました。 江戸の菓子屋「南星屋」を舞台にした短編集ですが、これが本当に素敵な作品です。繁盛店の裏側にある人々の複雑な人間関係、言葉にならない想い、そして優しさが丁寧に描かれています。武家の身分を捨てて職人になった主人・治兵衛を中心に、出戻り娘のお永、看板娘のお君といった登場人物たちが、ふっと心を開く瞬間が本当に良い。 私たちの年代だからこそ、共感できる部分が多いのかもしれません。親子の絆、人生の選択、やり直すことの大切さ——そういったテーマが、菓子という和やかな素材を通じて自然に伝わってくるんです。 読み味が本当に絶品という帯の言葉に偽りなし。短編ながら一つ一つが奥深く、装丁も美しい文庫本。今月のイチオシです。

感想

時代小説をこよなく愛する身としては、こういった作品に出会えるのは本当にありがたい。『まるまるの毬』は、江戸の菓子屋を舞台にした連作短編集なのだが、各編の人物描写が実に丁寧で温かい。 武家の身分を捨てて職人になった治兵衛、出戻り娘のお永、そして看板娘のお君——彼らが営む「南星屋」という空間に流れる時間が、読んでいて心地よい。菓子という日常的な商いを通じて、人間関係の機微や人生の複雑さが自然に浮かび上がってくる構成の巧さに感心させられた。 何より素晴らしいのは、登場人物たちの秘密や悩みが押しつけがましくなく語られることだ。自営業の身として、人間関係と生業の両立の難しさについ共感してしまう箇所も多かった。吉川英治文学新人賞受賞という帯文に納得がいく完成度である。 気軽に、しかし確かな手ごたえを感じながら読める。仕事帰りに少しずつ進めるのに最適な一冊だと思う。

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