かなちゃんの本棚
感想

話題作ということで期待を込めて手に取りました。言葉への向き合い方が丁寧に描かれており、辞書編集という地道な仕事に人生をかける登場人物たちの姿勢には、確かに感銘を受けました。 ただ、読み進める中で、物語として特に深い感動や新しい気づきが得られたかというと、素直に「はい」とは言えません。個性的なキャラクターが揃っているのに、それぞれの関係性の掘り下げがやや浅く感じられ、もっと複雑な人間ドラマを期待していた私としては少し物足りなさを感じました。管理職として組織の人間関係を日々目にしている身からすると、もう少し踏み込んだ葛藤描写があってもよかったかなと。 ただし、言葉という素材をテーマにしながら、地味だけれど確実な仕事の価値を丁寧に物語にした点は評価できます。読むに値しない作品ではありませんが、万人向けの安定した小説といった印象です。ビジネス書のように実務的な学びを求めるなら物足りず、純文学のような高い完成度を求めるなら及びません。

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