かなちゃんの本棚
感想

東野圭吾の作品は幾つか読んできましたが、これほど複雑な感情を揺さぶられたのは久しぶりです。幼い頃に両親を失った三兄妹が、14年後に復讐を遂行しようとする緊迫した物語。一見すると犯人探しと復讐劇ですが、その奥底に流れるのは家族の絆、そして人間の根本的な矛盾についての問いかけです。 特に印象的だったのは、結婚詐欺という犯罪行為に身を投じながらも、三人が互いを信頼し愛おしむ関係性が一貫していることです。管理職という仕事柄、人間関係の複雑さには目利きがあるつもりですが、この作品の人物描写の深さには唸らされました。ハヤシライスというシンプルな要素が、物語全体を貫く象徴として機能する構成の巧みさも見事です。 ただし、倫理的な問題を読者に投げかける設定だからこそ、どこか気がかりなまま読み終えた感覚は残ります。完全にはスッキリしない終わり方も、人によっては物足りなく感じるかもしれません。それでもなお、傑作として十分な説得力を持つ一冊です。

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