lit_diaryの本棚
シュガーアップル・フェアリーテイル 銀砂糖師と黄の花冠

シュガーアップル・フェアリーテイル 銀砂糖師と黄の花冠

三川 みり / あき KADOKAWA 2011年12月28日

感想

ライトノベルはあまり読まない方だが、この作品は思いがけず引き込まれた。銀砂糖師という職人技を題材にした世界観が、自営業を営む身として心に響いたのだろう。 主人公アンが新工房を立ち上げようとする矢先に王城からの依頼が舞い込む。その緊迫感と期待感の描き方が見事だ。職人の矜持と、より大きな仕事への挑戦という葛藤が丁寧に描かれている。さらに銀砂糖妖精ルルとの関係性が物語に深みを加えており、単なるファンタジーで終わらない人間ドラマがある。 特に秀逸なのは、一流の職人たちとの協働を通じて、アンが自分の役割を問い直していくプロセスだ。独立して事業を営む者であれば誰もが共感できる部分だろう。技術への誠実さと、限られた立場の中での創意工夫――そうした職人的な価値観が軸になっているところが素晴らしい。 派手さはないが、確かな構成力と登場人物への向き合い方が印象的だった。年相応に思える作品選択ではないかもしれないが、本書の質は十分に評価に値する。