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御暇 決定版

御暇 決定版

佐伯泰英 光文社 2026年2月10日

感想

幕末という激動の時代を舞台にしながらも、個人の葛藤と決断を丁寧に描き出す傑作だ。藤之助という人物が直面する「どう生きるべきか」という根源的な問いが、単なる歴史冒険譚を超えた深みを与えている。 観光丸での経験を通じて主人公が成長していく過程、そして幾つもの別れと対面が重ねられていく構成は見事である。歴史の大きな流れの中で翻弄されるのではなく、自分の足で立とうとする藤之助の姿勢には、ビジネスの世界で揺らぐ時代を生きる自分自身の身にも響くものがあった。 長崎から江戸へ向かうという地理的な移動だけでなく、精神的なステージの転換が表現されているところが特に素晴らしい。決定版とあるだけに、この作品の完成度の高さが窺える。文庫版で手軽に読める形になったのも嬉しい。人生経験を重ねた読者だからこそ味わえる余韻があるはずだ。