読書三昧の本棚
木挽町のあだ討ち

木挽町のあだ討ち

永井 紗耶子 新潮社 2023年1月18日

感想

話題になっていたこの作品、やっと手に取る機会がありました。江戸の芝居町を舞台にした時代小説ですが、これが想像以上に面白い。 仇討ちという歴史的事実をモチーフにしながら、その真相を徐々に明かしていく構成が秀逸です。最初は美談として語られる菊之助の一件が、段々と複雑な人間関係と思惑の絡み合いが見えてくる。その転換の妙技に引き込まれました。 自営業で日々の業務に追われていますが、この本を読んでいる時間は本当に心が満たされます。江戸の言葉遣い、人情、そして現代にも通じる葛藤──すべてが自然に心に沁み込んでくるんです。著者の筆力のおかげでしょう。 なにより素晴らしいのは、正義と悪が単純ではないということを、押し付けがましくなく描いている点。複雑さの中に人間らしさがあり、それが深い余韻を残します。55年生きてきたからこそ感じられる、この作品の層の厚さ。同年代の方にぜひ読んでいただきたい一冊です。

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