読書三昧の本棚
ほかならぬ人へ

ほかならぬ人へ

白石一文 祥伝社 2013年1月1日

感想

直木賞受賞作ということで手に取ってみたのですが、こんなに心が揺さぶられるとは予想外でした。 妻に裏切られた男性が、ある女性の纏う不思議な"徴"に惹かれていく——一見すると不倫や浮気のお話かと思いきや、そうではないんです。著者が真摯に問い続ける「愛とは何か」という問い自体が、この小説の本当の主題なんだと読み進むうちに気づかされます。 現実の人間関係の複雑さを知っている年代だからこそ、登場人物たちの揺らぎや迷い、そして最終的な選択に深くうなずけるのかもしれません。「ベストの相手が見つかったときは、この人に間違いないっていう明らかな証拠がある」という冒頭の一文が、ラスト近くでどういう意味を持つのか——その落とし方が実に見事でした。 文体も洗練されていて、読み心地が良い。話題作というだけでなく、本当に素晴らしい恋愛小説だと思います。自営業で日々慌ただしくしていますが、この一冊のために時間を作る価値は十分にあります。

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