橋本 美月の本棚
感想

直木賞受賞作『サラバ!』以来、待ちに待った長編小説です。話題になっているので手に取ってみましたが、期待を裏切らない作品でした。 松川貢と田持猛という幼馴染みの関係の逆転、そしてバンクーバーで展開する遥と万千花のストーリー。一見すると別々の人生が描かれているようですが、読み進めるうちに、絶望の中にも勇気を見いだそうとする人間の姿勢が浮かび上がってくる。この著者ならではの深い視点だと感じました。 執筆に3年費やされたというだけあって、登場人物たちの心情描写の丁寧さに引き込まれました。SNSを通じた現代的なつながりの描き方も新鮮です。時間とともに変わっていく人間関係の機微を、じっくりと味わえる。 派手な展開ではなく、静かに心に響く物語。57歳という年代だからこそ、人生の重さや選択の結果を思わずにいられません。これは何度も読み返したくなる一冊です。

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