近藤の本棚
「横浜」をつくった男

「横浜」をつくった男

高木 彬光 光文社 2009年9月8日

歴史冒険小説として期待して読み始めたのですが、正直なところ物足りない印象が残りました。 高島嘉右衛門という実在の人物の人生を扱った作品ですが、構成がやや散漫に感じます。投獄から易経との出会い、そして横浜での活躍という要素は興味深いはずなのに、各エピソードの繋がりが弱く、キャラクターの心理描写も深掘りが足りないように思えました。 技術者としての立場から見ると、論理的な因果関係や人物の成長過程をきちんと追えるかどうかが気になるのですが、その点で若干ストレスを感じました。易占という非合理的な世界観と歴史的事実をどう調和させるのか、もっと丁寧に描いてほしかったです。 ただし、幕末から明治という激動の時代を舞台にした設定や、実在の重要人物たちとの関わりという素材自体は悪くありません。慎重に本を選ぶ方であれば、先にほかのレビューを確認してから購入することをお勧めします。及第点ではありますが、強く推薦するほどではないというのが率直な感想です。