近藤の本棚
忍びの副業(上)

忍びの副業(上)

畠中 恵 講談社 2026年3月13日

感想

江戸時代の忍者を題材にした作品というと、どうしても派手なアクションや歴史冒険小説を想像してしまうのですが、この作品はそこから一線を画しています。 主人公たちが抱える「秘めた力をどう使うか」というジレンマが、とても現代的で共感できました。エンジニアである自分たちも、持っているスキルをどの場面でどう活かすかを常に判断していますから。弥九郎たちが傘張りの内職をしながら禄を得ている描写も、リアルな生活感があって好印象です。 何より、三人のキャラクターがそれぞれ異なる技を持ち、それが物語の中で自然に活躍する構成が見事。複雑に絡み合う人間関係や、将軍家の警護という責任の重さも丁寧に描かれています。 ただ上巻を読み終えた時点では、物語がようやく本格的に動き出そうとする段階で、果たしてどう展開するのか予想しにくい部分もあります。だからこそ続きが気になり、下巻を手に取らずにはいられません。娯楽性と深さのバランスが取れた、良質な時代小説だと思います。