近藤の本棚
父からの贈りもの

父からの贈りもの

長岡輝子 草思社 1984年3月1日

感想

仕事で疲れた夜、何気なく手に取ったこの本でしたが、一気に引き込まれてしまいました。 父と子の関係を描いた作品ということで、どこか重い話になるのではないかと少し身構えていたのですが、読み進むうちにその懸念は完全に払拭されました。著者の筆致は驚くほど温かく、人生経験を積んだ大人だからこそ感じられる複雑な感情が、丁寧に、でも決して説教的にならないように綴られています。 エンジニアとして論理的思考を大事にする自分ですが、この作品の魅力は理屈では説明できない部分にあります。親世代との距離感、時間とともに変わる関係性、そして無言のうちに受け継がれるもの——そうした目には見えない「贈りもの」が、まるで映画を見るように立ち現れてくるのです。 特に印象深かったのは、登場人物たちが何気ない日常の中で互いを理解しようとする姿勢です。完璧な家族なんて存在しないという現実の中で、それでも繋がろうとする営みが描かれている。大人になった今だからこそ、その切実さが胸に響きました。 迷わず手に取ることをお勧めします。