taroの本棚
感想

沖縄という舞台設定に惹かれて手に取った一冊だったが、これは単なる地域小説ではなかった。現代と戦中戦後という二つの時間軸を巧みに織り交ぜながら、暴力と向き合う若者たちの姿を描いている。 著者の筆力は確かだ。オタクの少年が故郷の「壁」に立ち向かう物語と、80年前の少年兵たちの記憶が交差するプロット構成に、最初は戸惑いも感じたが、読み進むうちにその意図が見えてくる。平易な言葉遣いながら、深い思想的な問いかけを含ませている手腕は見事である。 人生経験が増えた年代だからこそ、歴史と現在がつながっていることを実感しながら読めた。いじめ、暴力、那覇との分断といった重いテーマを扱いながらも、どこか諦めない主人公たちの声が響く。決して重苦しいだけの作品ではなく、新しい時代への希望も感じさせる。 気軽に読める作品ではないが、考えさせられる価値のある長篇だ。管理職という立場で若い世代と接する機会が多い者として、彼らが何と向き合っているのかを知ることができた。講談社の期待も頷ける逸材である。

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