はくしむるち
講談社 | 2026/01/29
みんなの感想
この本、沖縄という舞台とウルトラマン好きな主人公という設定だけで既に惹かれてしまいました。実在する複雑な背景を持つ土地が、現代と戦中という時間軸で丁寧に描き出されていて、読んでいて息つく暇もないほど。 デビュー作で二冠受賞した著者の力量が本当に伝わってきます。暴力や戦争といった重いテーマなのに、少年たちのオタク的な視点が入ることで、どこか人間らしい温かみが感じられるんです。それでいて目を背けたくなるような現実も直視させられる。その緊張感がたまりません。 特に印象的だったのは、歴史と現在が交差する場面。それぞれの時代を生きる少年たちが、同じような葛藤や痛みを抱えているというのが、なんか切なくて。簡単な答えを提示せず、読者に問いかけてくる構成も素晴らしいです。 気軽に読む小説って感じではないけれど、この本との出会いは本当に良かった。沖縄の文学にこんな傑作があるんだと感動しました。もう一度読み返したい一冊です。
沖縄を舞台にした作品ということで手に取ってみましたが、想像以上に骨太な小説でした。オタク少年と戦中の少年兵という一見つながりのない二つの時間軸が、「暴力」というテーマでじわじわと絡み合っていく構成が秀逸です。 筆者の圧倒的な筆力というのは本当で、沖縄という場所の複雑な歴史背景を、押し付けがましくなく物語に織り込んでいます。教育の現場にいると、子どもたちの葛藤や社会との軋轢が切実に感じられてくるんですが、この作品はそこに真摯に向き合っている。いじめや差別といった日常的な暴力から、戦争という究極の暴力まで、スケール感のある問いを立てています。 読んでいて息もつかせぬ迫力がありますし、ページをめくる手が止まりません。やや重いテーマですが、気軽に読める軽さと深さのバランスが取れているので、疲れた夜の読書にも無理なく入り込めました。新人賞ダブル受賞も納得の一作です。
沖縄という舞台設定に惹かれて手に取った一冊だったが、これは単なる地域小説ではなかった。現代と戦中戦後という二つの時間軸を巧みに織り交ぜながら、暴力と向き合う若者たちの姿を描いている。 著者の筆力は確かだ。オタクの少年が故郷の「壁」に立ち向かう物語と、80年前の少年兵たちの記憶が交差するプロット構成に、最初は戸惑いも感じたが、読み進むうちにその意図が見えてくる。平易な言葉遣いながら、深い思想的な問いかけを含ませている手腕は見事である。 人生経験が増えた年代だからこそ、歴史と現在がつながっていることを実感しながら読めた。いじめ、暴力、那覇との分断といった重いテーマを扱いながらも、どこか諦めない主人公たちの声が響く。決して重苦しいだけの作品ではなく、新しい時代への希望も感じさせる。 気軽に読める作品ではないが、考えさせられる価値のある長篇だ。管理職という立場で若い世代と接する機会が多い者として、彼らが何と向き合っているのかを知ることができた。講談社の期待も頷ける逸材である。
沖縄という土地がこんなにも深い物語を持っていたなんて。この本を読んで、私が知らなかったことがどれほど多いのか改めて気づかされました。 現代の沖縄に生きる少年と、戦中戦後を生きた少年兵の時間が交錯していく構成が見事です。デビュー作で既に多くの賞を受賞した著者らしく、筆の力強さが感じられます。いじめや暴力といった重いテーマを扱いながらも、読み進めるたびに引き込まれていきました。 正直なところ、途中難しいなと感じる場面もありました。でも、それがこの作品の真摯さなんだと思います。軽く読み流せる本ではなく、きちんと向き合う必要がある。そういう本ですね。 自営業をしていると、つい目の前の仕事のことばかり考えてしまいますが、こういう本を読むと、世の中にはもっと大切なことがあるんだと気づかされます。沖縄への新しい見方ができたし、何より物語としても面白かった。気軽には読めませんが、読む価値は十分ありますよ。
群像新人文学賞と野間文芸新人賞をダブル受賞した著者の長篇第一作ということで、期待値が高いまま手に取った一冊です。実際のところ、その期待を十分に上回る力作でした。 沖縄という舞台設定、いじめを経験した少年の視点、そして戦中戦後へのまなざしという複数の時間軸が交錯する構成は、最初は複雑に感じるかもしれません。ただ読み進めていくと、その複雑さこそが著者が伝えたい「暴力」の本質に向き合わせられていることに気づきます。 ウルトラマンへの憧憬という一見すると軽い設定から始まるのに、物語が深化していくにつれて、現代と過去が呼応し始める描写の巧さは見事。新社会人として世の中の理不尽さを感じ始めている自分にとって、この作品が投げかける問いは非常に重く、そして必要なものでした。 若干、後半の展開で詰め込み感を感じた部分もありますが、それを差し引いても十分に価値のある一冊。デビュー作でこの完成度というのは、著者の次作にも期待せずにはいられません。