一郎の本棚
感想

群像新人文学賞と野間文芸新人賞をダブル受賞した著者の長篇第一作ということで、期待値が高いまま手に取った一冊です。実際のところ、その期待を十分に上回る力作でした。 沖縄という舞台設定、いじめを経験した少年の視点、そして戦中戦後へのまなざしという複数の時間軸が交錯する構成は、最初は複雑に感じるかもしれません。ただ読み進めていくと、その複雑さこそが著者が伝えたい「暴力」の本質に向き合わせられていることに気づきます。 ウルトラマンへの憧憬という一見すると軽い設定から始まるのに、物語が深化していくにつれて、現代と過去が呼応し始める描写の巧さは見事。新社会人として世の中の理不尽さを感じ始めている自分にとって、この作品が投げかける問いは非常に重く、そして必要なものでした。 若干、後半の展開で詰め込み感を感じた部分もありますが、それを差し引いても十分に価値のある一冊。デビュー作でこの完成度というのは、著者の次作にも期待せずにはいられません。

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