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新装版 一絃の琴

新装版 一絃の琴

宮尾 登美子 講談社 2008年4月15日

感想

直木賞受賞作という触れ込みに惹かれて、慎重に評判を確認した上で手に取った一冊だ。一絃琴という、ほとんど聞いたことのない楽器を中心に据えた歴史小説というのも珍しく、その点でも興味をそそられた。 読み進めると、土佐藩という限定的な舞台設定の中で、女たちがいかに自らの矜恃を守り続けたかという普遍的なテーマが浮かび上がる。一絃のみという限定性が逆説的に、その音色の奥深さと、それを伝承しようとする登場人物たちの情念の深さを引き立てている。 フリーランスとして生きる身として、苗が市橋塾を興し隆盛させるくだりには、職業を越えた共感を覚えた。自分の道を貫くことの難しさ、しかし同時にそこに求められる覚悟が、平易な文体でありながらしっかり伝わってくる。 師弟の関係性、世代を越えた葛藤と受け継がれていくもの。文庫本という手軽さで読める分量でありながら、読後には相応の深い余韻が残る。レビューを重ねて選んだ甲斐のある作品だった。

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