みつこの本棚
感想

澁澤龍彦のこの著作、ずっと気になっていました。三島由紀夫も絶賛したという「幻の書」とは何とも惹かれるではありませんか。 七十を過ぎて、人生という長編を読み終える時分になると、世間一般が説く「人生の目的」や「理想の幸福」といったものに対して、素朴な疑問を感じるようになります。この本は、そうした疑問に真っ正面から答えてくれます。快楽という言葉は俗に聞こえるかもしれませんが、澁澤が論ずる「具体的な快楽」は実に精妙で、奥深い。 ボランティア活動をしていると、人々の様々な人生模様に触れます。成功だけが幸福ではなく、失敗の中にも、困難の中にも、人間らしい喜びが息づいている。その根本にあるのは、実は澁澤が言う快楽主義の哲学ではないか——読み進むうちに、そんな考えが強まりました。 文体は挑発的ですが、核にあるのは深い人間理解。人生の黄昏期にこそ読む価値のある一冊だと思います。時を経ても色褪せない思想の輝きが感じられました。

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