みつこの本棚
そして誰もゆとらなくなった

そして誰もゆとらなくなった

朝井 リョウ 文藝春秋 2025年7月8日

感想

この本を図書館で見つけた時、タイトルから漂う遊び心に思わず手に取ってしまいました。長年ボランティア活動で人間関係の機微を学んできた身にとって、こうした肩の力を抜いたエッセイは本当に貴重です。 著者の日常の「困った」や「恥ずかしい」という経験が、これほどまでに笑い転げる作品に化けるというのは、観察眼と表現力の賜物なのでしょう。カフェで読んでいると、つい吹き出してしまって周囲から奇異の目で見られるほど。結婚式の余興、ダンスレッスン、催眠術体験──人生に付きまとう予想外の出来事が、これでもかと並べられています。 特に印象的だったのは、著者がそれぞれのエピソードで自分自身をしっかり笑う姿勢です。誰もが年を重ねるなかで経験する「ちょっと無理をしてみた」という瞬間を、これほど肯定的に、かつユーモアを交えて描ける人は少ないでしょう。 人生の後半戦、完結編とのことですが、読み終わった後に改めて日常を見つめ直す良い機会になりました。

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