直木賞受賞作ということで期待して手にとりましたが、その期待を十分に上回る作品でした。 裏切られた男が、ある女性の中に見出す「ほかならぬ人」との繋がり—その単純ながら深い物語構造が魅力的です。著者は愛とは何かを、決して説教的にならず、丁寧に描き出しています。妻に裏切られた主人公の心理的な揺らぎから、新しい関係性の中での再生へ至るまでのプロセスが非常にリアルで、自分の人生経験と照らし合わせながら読んでしまいました。 新社会人として、人間関係や愛情について改めて考えさせられる機会をくれた良書です。「純粋な恋愛小説」という帯の表現も納得できます。ただし、期待値が高い分、終盤の展開にはやや物足りなさを感じた部分もあります。それでも、現代人が忘れがちな何かを思い出させてくれる作品として、多くの人に勧めたい一冊です。