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寡黙な死骸みだらな弔い

寡黙な死骸みだらな弔い

小川洋子(小説家) 中央公論新社 2003年3月1日

感想

医療の現場でずっと死と向き合っているからでしょうか、この作品に引き込まれて一気に読んでしまいました。 連作短篇集という形式で、時計塔のある街を舞台に、喪失や秘密、そして静かな弔いが描かれています。息子を亡くした女性、心臓を採寸する鞄職人、内科医の白衣に隠された秘密——どれもが心の奥底にしまい込まれた何かを抱えている。筆者の言葉選びが本当に清冽で、痛みや悲しみが決して派手ではなく、むしろ淡々と、でも深く心に届く感じです。 拷問博物館でベンガル虎が息絶えるという場面設定も印象的。一見すると奇想的なのに、読み進むうちにそれが何を象徴しているのか、なぜそこに置かれたのかが見えてくる。医療従事者として、人間の脆さや無常さについて考え続けてきたのですが、この本はそうした思いに静かに寄り添ってくれるような感覚です。 気軽に読める本ではありませんが、だからこそ心に残ります。お疲れ気味の時には向きませんが、落ち着いて読みたい時にはぜひ。

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