本大好きおじさんの本棚
感想

直木賞受賞作ということで手に取った一冊ですが、期待以上の面白さでした。医療現場で患者さんの人生の断片を見てきた身としては、このような刑事ドラマに描かれる人間の複雑さや葛藤に強く引き付けられます。 連作短編という構成も実に効果的で、同じ刑事・仙道を通して北海道のさまざまな町を舞台にした事件が展開していく。疲弊した刑事が事件に向き合う中で、被害者たちの人生や犯人の動機が少しずつ明かされていく過程は、思わず一気読みしてしまいました。 特に印象的だったのは、廃れた炭鉱町という舞台設定です。経済の衰退とともに取り残された人間たちの絶望感が、事件の背景に深く根ざしているんだと感じられて、単なるミステリーではなく、社会的な重みのある作品だと思います。 仕事で疲れた夜でも、ついつい続きが気になって読み進めてしまう。そういう意味で、気軽に手に取れる文庫版というのも本当に助かります。医療の現場と同じく、人間の業や悲しみに向き合う物語として、ぜひ多くの人に読んでもらいたい一冊です。