廃墟に乞う

廃墟に乞う

佐々木譲

出版社:文藝春秋 出版年月日:2012/01/04

文藝春秋 | 2012/01/04

4.25
本棚登録:5人

みんなの感想

感想

直木賞受賞作ということで手に取った一冊ですが、期待以上の面白さでした。医療現場で患者さんの人生の断片を見てきた身としては、このような刑事ドラマに描かれる人間の複雑さや葛藤に強く引き付けられます。 連作短編という構成も実に効果的で、同じ刑事・仙道を通して北海道のさまざまな町を舞台にした事件が展開していく。疲弊した刑事が事件に向き合う中で、被害者たちの人生や犯人の動機が少しずつ明かされていく過程は、思わず一気読みしてしまいました。 特に印象的だったのは、廃れた炭鉱町という舞台設定です。経済の衰退とともに取り残された人間たちの絶望感が、事件の背景に深く根ざしているんだと感じられて、単なるミステリーではなく、社会的な重みのある作品だと思います。 仕事で疲れた夜でも、ついつい続きが気になって読み進めてしまう。そういう意味で、気軽に手に取れる文庫版というのも本当に助かります。医療の現場と同じく、人間の業や悲しみに向き合う物語として、ぜひ多くの人に読んでもらいたい一冊です。

感想

直木賞受賞作ということで、つい手に取ってしまいました。警察小説というと、どうしても派手なアクションものを想像していたのですが、この『廃墟に乞う』は全く違いました。心身を病んだ刑事が、北海道の各地を舞台に過去と向き合う連作短編という構成が素晴らしい。 十三年前の事件と現在が重なる時、その底に横たわる人間の深い痛みや諦念のようなものが浮かび上がってくるんです。派手さはないけれど、静かで確実な重さがある。主人公の仙道という刑事が、休職中に故郷へ帰るという設定も効いています。地方の廃れていく町という舞台選びも含めて、著者の考えぬかれた構想が感じられました。 短編だからサッと読めると思ったら、むしろ各話で何度も立ち止まってしまいました。人間って何を求めているのか、事件って本当に解決するのか、そういう根本的な問いが静かに突きつけられている。この年代だからこそ、余韻の大切さや人生の複雑さに共感できるんだろうと思います。話題作だけに読む価値、本当にありました。

感想

直木賞受賞作ということで手に取ってみました。北海道の廃れた炭鉱町を舞台にした連作短編という設定は興味深く、心身を疲弾させた元刑事が事件に立ち向かう姿勢も引き込まれるポイントです。 ただ、正直なところ、読んでいて「なるほど」と唸らせる深さや、グッと心をつかむような瞬間が物足りなく感じました。それぞれの短編は丁寧に書かれているのですが、全体として連作としての統一感や、各篇をつなぐ強い何かが欲しかった。刑事ものとしては定番的な構成の範囲を出ていないような印象もあります。 自営業で忙しい身なので、さっと読める短編集として重宝はしましたし、北海道という土地の描写は雰囲気がありました。ただし、高い期待値で手に取ると、若干肩透かしを食らう可能性は否めません。気軽な読書として、まぁまぁといったところでしょうか。

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