はるとの本棚
汝、星のごとく

汝、星のごとく

凪良 ゆう 講談社 2025年7月15日

感想

本屋大賞の受賞作ということで、期待値を高めすぎないよう気をつけながら読み始めた。結果として、その慎重さは杞憂に終わった。 この作品の魅力は、何といっても人物描写の丁寧さだ。暁海と櫂という二人の主人公の心理変化が、細部にわたって描き込まれている。エンジニアとしてロジカルに物事を考える習慣がある私だからこそ、その繊細さに改めて気付かされた。恋愛という感情的なテーマを扱いながらも、登場人物の行動や選択に一貫性があり、説得力がある。 瀬戸内の島という舞台設定も効果的だ。風景描写を通じて、登場人物たちの心理状態が自然と伝わってくる。「切ない」というキャッチコピーは伊達ではなく、物語が進むにつれ、読者も同じように揺さぶられる感覚を味わえる。 文庫版という手軽さも相まって、通勤の移動時間に少しずつ読み進めるのに最適だった。難しい表現もなく読みやすいが、決して浅くない。大賞受賞の理由がしっかり理解できる、良質な文学作品だと思う。

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