はるとの本棚
感想

『火花』から10年、著者がどんな作品を書くのか気になって手に取った。結論から言うと、期待以上だった。 表面的には「借金」という身近なトラブルから始まる話なのだが、そこから展開する人間関係の泥臭さと、それでいて不意に訪れる笑いのバランスが絶妙だ。エンジニアとして論理的に考える癖がついている自分でも、岡田という主人公の選択肢の狭さ、そして逃げられない感覚にぐいぐい引き込まれた。 特に印象的だったのは、登場人物たちが「生きる」ことの重みと軽さを同時に背負っているように見えるところ。完璧に見える人生も、ほんの些細なことで狂い始める。その過程が決して教訓的ではなく、ただただ人間くさく、時にはばかばかしく描かれている。 現実的な視点を持つ読者なら、この作品の中で複数回「あ、これはわかる」と思うはずだ。決して明るい話ではないが、それでも読み終わった後に残る感覚は悪くない。むしろ、人間というものへの理解が少し深まったような気がする。慎重に選ぶ派の私でも、自信を持って薦められる一冊だ。

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