はるとの本棚
感想

朝井リョウの新作ということで、前作『正欲』の評判も高かったため、慎重に情報を集めてから購入に踏み切った。結果として、その判断は正解だった。 本書は一見すると奇妙なタイトルと設定で戸惑う読者も多いだろう。だが読み進むと、著者が仕掛けた構造的な工夫が次々と明かされていく。エンジニアとしての視点を持つ身として、その精密さに感心した。緻密な論理設計の上に、人間関係の複雑さを積み重ねていく手法は見事だ。 ただし容易には読めない。登場人物たちの行動原理が一見不合理に映ることもあり、その背景にある想いを汲み取るには集中力が必要である。惰性で読み進められるタイプの本ではない。むしろ、ビジネス書を読むような気持ちで、著者が何を問いかけているのかを意識しながら読むべき作品だ。 テーマの新規性と表現の大胆さは評価に値する。ただ万人向けではなく、ある程度の文学的な読み慣れが前提となるだろう。時間をかけて読む価値のある一冊である。

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