一郎の本棚
感想

新社会人として働き始めてから、「普通」とは何かをよく考えるようになった。この作品は、その問いに真正面から向き合わせてくれる一冊だ。 主人公・恵子がコンビニで18年間働き続ける日常。一見すると変わった人生に見えるかもしれないが、読み進むにつれて、彼女がそこに見出している秩序と安定感が伝わってくる。完璧なマニュアルの中で、自分の居場所を見つけているというのは、実は誰もが求めているものではないか。 社会人になって数ヶ月、組織に適応しようと試行錯誤している自分と重ね合わせながら読んだ。恵子の視点を通じて見える世界は、不気味さと親密さが混在していて、その絶妙なバランスが魅力だ。短編のような読みやすさながらも、深い思考を促す構成になっている。 ただ、後半の展開については、もう少し丁寧に描かれてもよかったという思いもある。それでも、自分たちの「正常さ」の定義を問い直す契機として、十分な価値がある作品だと感じた。