てつの本棚
感想

小川糸の文章の繊細さはいつも好きなのですが、今作は個人的にはやや期待を下回ってしまいました。 全国各地の食堂を巡礼し、料理人たちの人生に触れるというコンセプト自体は素敵です。山形の茶屋、沖縄の深い森での食事、能登の復興を支える人々…訪問先の選定も丁寧で、読んでいると著者の向き合う姿勢が伝わってきます。 ただ、エッセイとしての厚みがやや不足しているように感じました。料理と人物描写の中に、もっと著者自身の内面や問い、葛藤が欲しかった。訪問記としては成立していますが、どのページを読んでも少しどこか距離を感じてしまい、引き込まれ切れません。教室で生徒たちの人生に日々接している身としては、もう少し深い人間関係の機微を期待していたのかもしれません。 悪い本ではありませんが、小川糸作品としては少し物足りない。ゆったり読むには悪くない一冊です。

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