感想
長く続くシリーズをここまで追い続けるのは久しぶりのことだが、このラミジ艦長物語はその甲斐があると感じている。第9巻の今作でも、艦長の揺るがぬ信念と部下たちへの向き合い方が相変わらず秀逸だ。 船乗りたちのドラマというのは、限られた空間での人間関係の深さにこそ本当の価値がある。本書では、長年の航海で培われた信頼関係が試されるエピソードが複数展開されており、読んでいて思わず身を乗り出す場面が何度もあった。作者は装飾的な描写を避け、会話と状況描写だけで登場人物の心情を丁寧に伝えている。 この歳になると、キャラクターの迷いや葛藤がよけいに胸に響く。現実の職場でも似た局面に遭遇することがあるからだ。艦長はどのように決断を下すのか、その過程を見守ることが今の読書の楽しみになっている。 若干、中盤の展開に些か急ぎ足な感が否めないが、全体としてはシリーズの水準を保ちつつも新たな深みを加えたと言えるだろう。次巻への期待感も高まっている。