直人の本棚
どんどん橋、落ちた

どんどん橋、落ちた

綾辻行人 講談社 2002年10月1日

感想

最近、話題のミステリ短編集ということで手に取ってみました。綾辻行人が実在の難事件をモチーフに創作したという触れ込みで期待も大きかったのですが、読み終わってみると、正直なところ可もなく不可もなく、という印象が拭えません。 表題作の「どんどん橋、落ちた」は確かに仕掛けが凝っていて、犯人当てとしての興味は引き出されます。ただ、五編すべてを通して読むと、パターン化した印象が残ってしまうんですよね。トリックの巧妙さに重きが置かれすぎているせいか、登場人物の心情描写や背景説定に深みが感じられない。 58年も生きていると、ミステリの構造がある程度見えてしまう悪癖があるのかもしれません。若い頃のような純粋な驚きや感動を求めるのは贅沢というものでしょう。ただ、この作品は「謎解きを楽しむ」という基本に忠実すぎて、人間ドラマとしての奥行きが欲しかったというのが正直な感想です。短編集としては及第点ですが、綾辻作品としては少し物足りなさが残ります。

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