直人の本棚
新装版 夜中の薔薇

新装版 夜中の薔薇

向田 邦子 講談社 2016年2月13日

感想

新装版との文字づくりと装丁に引かれて手に取った一冊です。著者の最後のエッセイ集ということで、どのような思考の軌跡が綴られているのか興味を持ちました。 読み進めると、確かに凛とした筆致で半生が語られており、その誠実さには好感が持てます。特に「手袋をさがす」の冒頭は印象的で、何かを探し続ける人間の本質について考えさせられました。ありふれた日常の中に哲学的な問いを見出そうとする姿勢は、この著者らしいと感じます。 ただ、読み終わってみると、エッセイ集全体を通して特に心に残る一編が少なかったのが正直なところです。どの作品も教養的で丁寧に書かれているのですが、その丁寧さゆえに、読者の心をぐっと掴む力強さに欠ける印象を受けました。新装版による読みやすさは確認できましたが、内容的には既刊本と大きく変わるものではないでしょう。 著者の思想や人格に魅力を感じる方なら満足できると思いますが、私のように話題の作品をと考える読者には、標準的な仕上がりという評価になります。

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