直人の本棚
感想

古典文学の現代的な読み直しが流行っているということで手に取った一冊だ。『落窪物語』を現代の感覚で再構成した作品だが、実に巧妙である。千年前の物語とは思えないほど、心理描写が丁寧で生き生きしている。 何より印象的なのは、おちくぼ姫のキャラクター設定だ。虐げられながらも決して心が歪まない、むしろ芯の強さを保つ彼女の存在感が素晴らしい。シンデレラ的な枠組みを借りながらも、日本的な品性や教養という要素が加わることで、単なるおとぎ話を超えた深みが生まれている。 貴公子との関係性も慎ましやかで魅力的だ。身分違いの恋愛という古くからの題材を、平安時代の文化背景の中で丁寧に描くことで、あの時代への理解も深まる。 文庫版という手軽さも良い。会社帰りの通勤電車で読むには絶好だ。久しぶりに日本の古典に向き合う気持ちよさを感じさせてくれた。話題作というのも納得できる一冊である。

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