三浦の本棚
近畿地方のある場所について(1)

近畿地方のある場所について(1)

背筋 KADOKAWA 2023年8月30日

感想

怪談という単純なジャンルだと侮っていました。本書を読み進めるにつれ、単なる恐怖ストーリー集ではなく、緻密に構築された謎解きの様相を呈してきます。近畿地方のある場所で収集された怪談たちが、次第に一本の糸で繋がっていく感覚は、ミステリー好きな私にも大きな満足感をもたらしました。 著者が提示する「恐ろしい事実」へ向かって、読者も一緒に謎の深淵へ導かれていく構成が素晴らしい。各章ごとに異なる視点から同じ場所が描かれることで、立体的な真実像が浮かび上がってくるのです。 本来、こうした怪談本は些か単調になりがちですが、本書は緻密な取材とエッセイ的な筆致で、読み応えのある一冊に仕上がっています。心理的な恐怖と、理性的な考察のバランスが秀逸で、大人が読む「怪談」として十分に価値があります。慎重に選ぶ私が心から推奨できる作品です。

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