三浦の本棚
フィッシュストーリー

フィッシュストーリー

伊坂 幸太郎 新潮社 2009年12月1日

感想

伊坂幸太郎の作品は、その構成の巧みさで定評があるが、本書『フィッシュストーリー』はまさにそれを象徴する一冊だった。表題作を含む四つの中篇が、一見バラバラな出来事として始まりながら、最後に見事に収束していく快感は筆舌に尽くしがたい。 特に印象的だったのは、テーマとして貫かれている「何かが世界を変える」という想い。売れないロックバンドの最後のレコーディングから始まるストーリーが、遠い時間軸を越えて想像もしない形で世界と繋がっていく—その連鎖的な美しさに何度も息をのんだ。現実の仕事の日々で疲弊していた心に、こういう爽快感が必要だったのだろう。 また、黒澤というキャラクターが複数の話に登場することで、物語同士の関係性が浮き彫りになる工夫も秀逸だ。文庫本というコンパクトなサイズながら、スケール感のある世界観を作り上げている。 慎重に本を選ぶ方であれば、この作品はまず間違いなく後悔させない。エンタテインメント性と文学的な満足度が両立した、実に良い読書体験ができるはずだ。

ブクログからブクマへ
かんたん引っ越し

読書記録や感想をそのまま移行。
数分の準備で、ブクログの本棚をブクマへ。

詳しく見る
ブクログからブクマへの引っ越しイメージ