雄一の本棚
また君と出会う未来のために

また君と出会う未来のために

阿部 暁子 / syo5 集英社 2018年10月19日

感想

時間SF と青春小説の融合という難しいテーマに、ここまで見事に取り組んだ作品は珍しい。主人公が2070年の未来で出会った女性への想いを心に秘めたまま現代を生きる、その葛藤の描き方が実に丁寧だ。 54歳になると、人生で逃した機会や選択の重みがより一層身に染みる。この小説はそうした大人の読者にも響く何かを持っている。青年たちが音楽を通じて絆を深めていく過程や、時間という概念を超えた再会への希望が、ごく自然に物語に織り込まれている。 前作『どこよりも遠い場所にいる君へ』を未読のままでも十分楽しめるが、シリーズとしての繋がりを感じさせる構成も秀逸だ。慎重に作品を選ぶ私としては、このような手応えのあるエンタメ小説は心から推薦したい。ただし、時間SFの複雑さに少し戸惑うかもしれない読者もいるかもしれない。それでも挑戦する価値は十分ある。人生の異なる段階にいる人々がこの作品をどう読むのか、ぜひ試してみていただきたい。

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