雄一の本棚
探偵小石は戻らない

探偵小石は戻らない

森 バジル 小学館 2026年9月30日

感想

前作が本屋大賞ノミネートされたという情報を見かけて、続編も慎重に手に取ってみました。正解でした。 このシリーズの魅力は、登場人物たちの軽妙な掛け合いと、その裏に隠された緻密な構成にあります。探偵・小石と調査員・蓮杖のやり取りは楽しく、思わず微笑んでしまう場面も多い。しかし本作では、その愉快さの奥に何層もの仕掛けが仕込まれていることに気づかされます。 物語は冒頭から揺さぶられます。蓮杖が目撃した「犯人としての小石」という設定だけで、読者は引き込まれてしまう。そこからの展開は見事としか言いようがありません。何度も予想を裏切られ、その度に「なるほど」と納得させられる感覚は、ミステリ好きの私でも久しぶりに味わったものです。 特に印象的だったのは、ラストシーン。編集担当の推薦文通り、これまでの物語がすべて一本の線でつながる瞬間の快感は格別です。ネタバレを避けて語ることが難しいほど、その完成度は高い。 54歳になると、ともすれば物語に対して批評的になりがちですが、本作はそうした読者の懐疑心さえも巧妙に取り込んでいるような感覚さえ覚えました。ミステリ愛好家には強くお勧めします。

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