雄一の本棚
パッキパキ北京

パッキパキ北京

綿矢 りさ 集英社 2026年6月19日

感想

北京という大都市を舞台にした駐在妻のエッセイ的小説ということで、期待半分、警戒半分で手に取りました。正直なところ、こうした現地ルポ的な作品には当たり外れが大きいと感じていたからです。 しかし読み始めてみると、菖蒲という主人公の徹底した観察眼と、何事にも動じない姿勢に引き込まれました。コロナ禍の隔離、言葉の壁、文化的な違和感——これらの困難を、著者は決して悲劇的に描かず、むしろユーモアとフラットな視点で切り抜けていく。北京の食文化から交通事情、人間関係まで、あらゆるものを「味わい尽くす」その姿勢は、実に爽快感があります。 エッセイ的な筆致でありながら、小説としての構成も確かで、一気読みさせる力があるのはさすがです。中国という異文化を単なる「外部者」の視点ではなく、そこに根を下ろそうとする誠実さが感じられました。私たち会社員にとって、ときに異国での生活を余儀なくされることもあります。そうしたとき、この本のような前向きで柔軟な姿勢は、実に参考になるのではないでしょうか。

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