みいの本棚
号泣する準備はできていた

号泣する準備はできていた

江國香織 新潮社 2006年6月28日

感想

話題になっていた直木賞受賞作ということで、ずっと気になっていました。やっと読む機会を得たのですが、これは本当に素晴らしい。 表題作の「号泣する準備はできていた」から引き込まれます。濃密な恋が終わっていく過程を描いた作品なのですが、その悲しみの質感がこんなにも繊細で、正確に言葉にされているのかと驚きました。自分自身の人生経験と重ねながら読んでいると、思わず深呼吸したくなるような場面がいくつもあります。 収録されている全12篇は、どれも恋愛や人間関係の微妙な感情を扱っているのに、決して重くならず、むしろ清々しさすら感じます。特に「じゃこじゃこのビスケット」という17歳の初デートの思い出を綴った短編は、懐かしさとほろ苦さが絶妙で、何度も読み返してしまいました。 42歳になると、自分の人生経験が物語の深さを増してくれるのだと改めて気付きました。号泣するほどの悲しみが人生には何度も訪れるけれど、この本はそれを静かに肯定してくれる。そして「きっと大丈夫」と囁きかけてくれるのです。最近、こういう心に染みる本に出会うことの大切さを感じています。

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