グロリアソサエテ

グロリアソサエテ

朝井 まかて

出版社:KADOKAWA 出版年月日:2025/12/12

KADOKAWA | 2025/12/12

4.33
本棚登録:4人

みんなの感想

感想

京都の歴史に息づく「民藝」の物語として、慎重に手に取った一冊でした。 柳宗悦、河井寛次郎、濱田庄司という実在の人物たちが、日常の品々に秘められた美しさを発見し「民藝」という概念を生み出していく過程を、女中奉公のサチの視点から描いています。正直なところ、大正期の美術思想というテーマに最初は少し構えていたのですが、その心配は杞憂でした。 サチという架空の人物を通すことで、読者も彼女と一緒に民藝の世界へ導かれていく感覚が素晴らしい。薄汚れた古布や埃まみれの陶磁器に美を見出す男たちの言葉や姿勢が生き生きと伝わってきます。派手さはありませんが、むしろそのあたたかみのある描写が、京都の家での穏やかな時間を静かに感動させてくれます。 ただ、歴史的背景がやや簡潔かなと感じた部分もあります。いずれにせよ、大正期の京都という時代と場所に魅了される方、あるいは日本の美意識について深く考えたい方には、強くお勧めできます。丁寧に描かれた良質な歴史長編です。

感想

民藝という言葉に惹かれて手に取った一冊です。大正時代の京都を舞台に、柳宗悦らが日常の器具の中に美を見出し、新たな美学を生み出していく様子が丹寧に描かれています。 印象的だったのは、少女サチの視点を通じた世界観の開き方です。平凡な日常品に次々と魅了されていく大人たちを見つめることで、読み手も自然と「民藝」という概念に引き込まれていきました。歴史小説としての厚みがありながらも、個人の成長物語としても読み応えがあります。 ただし、若干の慎重さを持ちながら申し上げると、時代背景や人物設定によっては予備知識があるとより深く楽しめるかもしれません。それでも本書は充分に独立した物語として完成しており、その点は評価できます。古い京都と新しい美意識が交錯する時代の息遣いが、細部の描写によって生き生きと感じられる良質な歴史長編だと思います。

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