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グロリアソサエテ

グロリアソサエテ

朝井 まかて KADOKAWA 2025年12月12日

京都の歴史に息づく「民藝」の物語として、慎重に手に取った一冊でした。 柳宗悦、河井寛次郎、濱田庄司という実在の人物たちが、日常の品々に秘められた美しさを発見し「民藝」という概念を生み出していく過程を、女中奉公のサチの視点から描いています。正直なところ、大正期の美術思想というテーマに最初は少し構えていたのですが、その心配は杞憂でした。 サチという架空の人物を通すことで、読者も彼女と一緒に民藝の世界へ導かれていく感覚が素晴らしい。薄汚れた古布や埃まみれの陶磁器に美を見出す男たちの言葉や姿勢が生き生きと伝わってきます。派手さはありませんが、むしろそのあたたかみのある描写が、京都の家での穏やかな時間を静かに感動させてくれます。 ただ、歴史的背景がやや簡潔かなと感じた部分もあります。いずれにせよ、大正期の京都という時代と場所に魅了される方、あるいは日本の美意識について深く考えたい方には、強くお勧めできます。丁寧に描かれた良質な歴史長編です。