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異世界大家さんの下宿屋事情

異世界大家さんの下宿屋事情

六つ花えいこ アルファポリス 2019年2月1日

感想

正直なところ、ライトノベルはあまり手に取らないジャンルなのだが、この作品は思いのほか好ましい読み物だった。異世界転生という使い古されたプロットながら、焦点が冒険譚ではなく「下宿屋経営」という地味だが実在的なテーマに置かれているところが秀逸だ。 主人公トゥトゥが前世の記憶を活かして料理や経営に取り組む様は、ビジネス書的な実用性さえ感じさせる。単なる魔法や剣戟ではなく、人間関係を丁寧に構築していく過程が心地よい。人魚やハービー、吸血鬼といった変わり種の住人たちも、奇抜なだけでなく一人ひとりに深みがあり、彼らとの交流を通じた成長が自然に描かれている。 自営業を営む身として、経営センスや人心掌握の工夫といった部分に共感する場面も多い。派手さは控えめだが、スローライフの中に人情が息づく構成は、人生経験を積んだ読者にも十分以上の充足感を与える。文庫の書き下ろし番外編も含めたボリュームも相応に満足できた。若い読者だけでなく、大人が読んでも味わい深い一冊である。

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