莉子の本棚
海辺のカフカ(上巻)

海辺のカフカ(上巻)

村上 春樹 新潮社 2005年3月1日

感想

ボランティアの仕事をしていると、若い世代の人間関係や心の葛藤についてよく考えさせられます。この作品はそうした思いを深く探求した傑作だと感じました。 十五歳の少年が家を出て見知らぬ街で生きていく物語ですが、何度か立ち止まって読み直してしまうほど、内容が濃密です。少年の独白を通じて、親子関係、アイデンティティ、そして人間が生きていく意味が丁寧に描かれています。村上春樹の文体は相変わらず洗練されていて、難しすぎず、かといって安っぽくもありません。 この上巻を読んでいると、むしろ下巻へ進みたくなる引き込まれ方があります。少年の行動や思考の謎が次々と現れ、その謎を解き明かしたくなるという執筆者の手腕が光っています。人生経験が長いからこそ、若き日の迷いや決断の大切さがひしひしと伝わってきました。 文庫本というお手ごろな形態も良いですし、腰を据えて読む価値のある一冊です。特に人生について深く考えたい時期にある若い方々や、そうした時代を思い出したい私たちのような年代にもお勧めできます。

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