読書三昧の本棚
灯台からの響き

灯台からの響き

宮本 輝 集英社 2023年6月20日

感想

話題になっていたこの本、ついに文庫化されたので早速手に取りました。地方紙の連載作だったというのも興味をそそりました。 中華そば屋の康平が、亡くなった妻が大切にしまっていた古い葉書を発見することから始まるこのお話。30年前の謎を追って灯台を巡る旅へ出るという設定だけで、もう引き込まれてしまいます。自営業の私にとって、夫婦で店を営むというシチュエーションも身近に感じられました。 何より素晴らしいのは、この作品の静かな緊迫感です。派手な展開ではなく、じわじわと謎が解けていく過程が心地よい。妻の知られざる過去という重い題材を扱いながらも、温かみを失わない筆致に感動しました。登場人物たちの会話が自然で、読んでいて自分もその場にいるような感覚に包まれます。 人生経験を重ねた今だからこそ、こうした大人の物語の良さがわかるのかもしれません。愛する者を失った悲しみの中にも、人とのつながりの大切さが溶け込んでいて。年を重ねた読み手だからこそ刺さる、素敵な一冊です。

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