ななちゃんの本棚
感想

明治という時代の薄暗い隙間に生きた人々を描く連作集です。民俗学者が「キ」という謎めいた集団の痕跡を追うという枠組みで、四つの物語が綴られています。 正直なところ、期待と現実のズレを感じました。歴史冒険小説としての面白さと、民俗的・妖怪的な不気味さの両方を狙っているようですが、どちらかというと中途半端に感じられたのです。各編の世界観の構築は丁寧で、特に秋姫とタキの関係性の変化や、人語を話す大猿にまつわる回想は興味深い素材です。 ただ、4編すべてが等しく引き込み力を持っているわけではなく、読み進むにつれて集中力が散漫になってしまいました。また、全体としてどのような問いかけを読者に投げかけているのかが、ぼやけているように思えます。 47年生きていると、曖昧さを許容できる器は広くなるのですが、それでもこの作品には何かしら核となるメッセージを期待していました。不快ではありませんし、文章も読みやすいのですが、読了後の余韻や思考の深まりが物足りない。丁寧な仕事ぶりは感じられるものの、非常に惜しい一冊だと感じます。

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