橋本 美月の本棚
マカン・マラン

マカン・マラン

古内一絵 中央公論新社 2025年11月20日

感想

SNSで話題になっていたこの本、ついに文庫化されたということで手に取ってみました。元エリートサラリーマンがドラァグクイーンという設定だけで、もう惹きつけられてしまいました。 お話は四つの短編で構成されており、どれもシャールのお店を訪れる異なる背景を持つ人々が登場します。40代のキャリア女性、手料理を食べない中学生など、現代に生きる誰もが抱える葛藤や疲労感が丁寧に描かれています。 何より素敵なのは、提供される料理に込められた「優しさ」の表現です。食べ物を通じて、人間関係が温かく紡ぎ直されていく過程が本当に心地よい。パート勤務をしながら日々を過ごす私たちにとって、「苦しいのはあなたがちゃんと考えているから」という言葉は、これ以上にない励ましになるんですよね。 10年愛され続けた名作というのも納得です。時代が変わっても、人間の本質的な優しさへの渇望は変わらないのだと改めて感じさせられました。静かで、でも深く心に残る一冊です。

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