本と珈琲の本棚
蜜蜂と遠雷(下)

蜜蜂と遠雷(下)

恩田 陸 幻冬舎 2019年4月10日

感想

嘱託先の若い女性が貸してくれたのが、この『蜜蜂と遠雷』の下巻だった。正直、上巻を読むまでピアノコンクール小説など縁がないと思っていた。だが一気に引き込まれ、続きが気になって気になって、仕事の昼休みもずっと本を握っていたほど。 下巻は予選から本選へと進むたびに、登場人物たちの人生ドラマが深まる。才能に恵まれた者、地道に努力してきた者、人生に迷いながら進む者——彼ら彼女らの思いが音楽にのって伝わってくるようだ。ピアノの音は聞こえないのに、指の動き、呼吸、心の揺らぎまでが見えるような描写の力に感心した。 競技の興奮だけでなく、各キャラクターの背景にある人間関係や葛藤も丁寧に描かれている。自分と違う人生を歩む若い世代の姿を通じて、あらためて人生について考えさせられた。気軽に読める文庫本とは思えないほど、読み終わった後に心に残るものがある。定年前のこの時期に、こんな素敵な本に出会えてよかった。

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