親友の死を通じて「友情とは何か」を問い直す作品です。著者が失った山岳カメラマンの親友・平賀淳の人生と、30年にわたる二人の関係を丁寧に追っていく内容で、ノンフィクションながら文学的な深みがあります。 読んでいて感じたのは、嫉妬や羨望といった複雑な感情がリアルに描かれているという点です。完璧に見える親友へ向けられた著者の本当の気持ちが、時間をかけて明かされていく過程は引き込まれます。アラスカの氷河を実際に訪ねるくだりも、著者の覚悟や葛藤がにじみ出ていて、それなりに心を動かされました。 ただ、全体的には少し重めで、時々息苦しさを感じることもありました。中年の身としては、感情的には理解できる部分が多いのですが、ページを重ねるにつれ同じテーマの繰り返しになっているような印象も受けました。悪い本ではありませんが、特別に光るものがあるわけでもなく、という感じですね。気楽に読むというより、心構えして読む必要がある作品です。
最近登録された他の本の感想
2026年07月25日
最近、孫がPixel 10を使ってるのを見て、自分も買ってみたんですよ。でも説明書だけじゃよくわからなくて、この本を手にとってみました。 正直なところ、スマートフォンの解説書って難しいイメージを持ってたんですが、この本は違いました。フルカラーの画面写真をたっぷり使ってるので、実際の操作と本の説明がぴったり合う。目が疲れやすくなった年代にはありがたいですね。 特に良かったのは、AIのGeminiを使った機能の説明。最初は何が便利なのかピンとこなかったんですが、この本を読むと「ああ、こういうことか」と納得できます。文書の要約や音声文字起こしなんて、これまでは考えもしなかった機能。自分の使い方だと確実に活躍する場面がありそうです。 少し欲を言えば、もう少し初心者向けの基本的な部分を厚くしてほしかった気もします。でも全体的には、この世代でも十分に使いこなせるようになる、良い入門書だと思いますよ。
2026年07月06日
定年前のこの歳になって、こんなに一気読みしてしまった本は久しぶりです。『火車』、本当に素晴らしい。 失踪した女性の謎を追う刑事の視点で物語が進むんですが、最初は婚約者がなぜ逃げたのか、その理由が気になってぐいぐい引き込まれていく。ページをめくる手が止まりませんでした。自分の人生経験があるからか、登場人物たちの背景にある事情が身にしみて理解できるというか、人間の弱さや絶望みたいなものがリアルに感じられたんです。 特に印象的だったのは、カード会社や借金という現代社会の問題を通じて、一人の女性がどういう人生を歩んできたのかが少しずつ明かされていくところ。ミステリーとしての面白さと、人間ドラマとしての深さが両立している。派手な展開はないけれど、その分、真実にたどり着いたときの衝撃が大きい。 文庫本という気軽さで読み始めたのに、山本周五郎賞受賞作というのも納得です。還暦を過ぎた今だからこそ、この作品の良さが余計に分かるのかもしれません。おすすめできる一冊です。
2026年07月05日
大谷翔平選手で有名になった中村天風という人物について、ちょっと興味を持って手に取ってみました。明治生まれの思想家の教えを現代的な悩みに絡めて解説するという構成は、なかなか工夫されているなあと思います。 本書は「考え方」「Q&A」「実践」という三部構成で、分かりやすく整理されているのが良いですね。「心ひとつの置きどころ」といった天風の名言も、なるほどと納得できるものばかり。定年を迎えた身としては、人生観を改めて考える参考になりました。 ただ、正直なところ、特に目新しい発見があったかというと、そこまでではないというのが本音です。世間一般で言われている「ポジティブに考えましょう」「人生は自分次第」といった教えが、天風の言葉を通して改めて述べられている感じで、既に知っていることばかりという印象も拭えません。 悩める現代人に向けた問答コーナーは読みやすく参考になりますが、もう少し深掘りした内容があれば、もっと満足度が高かったと感じます。軽く読める自己啓発本をお探しでしたら、無難な一冊だと思いますよ。
2026年06月30日
文庫本で気軽に読めるということで手にしたのですが、思いのほか心に残る作品でした。大阪万博という懐かしい時代設定も良かったんでしょう。叶わなかった恋という誰もが心のどこかに抱えているテーマを、二十数年という長いスパンで丁寧に描いているんです。 若い頃に失った愛する人のことを、その後の人生でずっと引きずってしまう。そういう切実な思いが、あますところなく綴られています。読んでいて、自分もかつて経験した後悔や未練が甦ってくるようでした。重い話なのに、なぜか最後まで一気に読めてしまう力強さがあります。 年を重ねた今だからこそ、こういう究極のラブストーリーの良さが理解できるのかもしれません。人生すべてが思い通りに進むわけではないこと、そしてそれでも前に進んでいくしかないことが、そっと心に届く。涙が出そうになりました。気軽に読める文庫という形式も、こういう深い内容だからこそ、多くの人に届きやすいんだろうなと感じます。
2026年06月15日
この シリーズ、気がつけば第3巻まで来てしまいました。もう すっかり虜ですね。 蜘蛛をテイムして糸で裁縫というユニークな設定が、こんなに面白く展開していくとは思いませんでしたよ。主人公リリィの成長ぶりが本当に気持ちいい。港町での新しい技術習得、王都での華やかな活動、そして巻き込まれてしまう国家間の問題——どれもが自然に、そして魅力的に結びついている。 何より素晴らしいのは、登場人物たちが皆、それぞれに個性的で、親しみやすいこと。蜘蛛のタラトが進化するくだりなんかは、本当にほほえましい。こういう何気ないエピソードが、この物語の温かさを引き立てているんでしょう。 嘱託の身で、気軽に読める小説を探している身としては、このシリーズはぴったり。難しく考えずに、物語の世界に浸れる気楽さがいい。次の巻も楽しみで、つい手が伸びてしまいそうです。
2026年06月15日
双葉社の文庫本、ということで手に取ってみました。最近は気軽に読める推理小説をよく選んでいるんですが、これはなかなか味わい深い一冊です。 教師の殺人事件から始まる物語なのですが、何が良いかというと、捜査をする側の人間ドラマがしっかり描かれているところ。星野警部という個性的な登場人物が、一風変わった捜査方法で事件に迫っていく過程が興味深い。警察内での軋轢や、捜査員たちの葛藤も丁寧に書かれていて、単純な謎解きにとどまらない深さがあります。 第二の事件が発生することで物語が加速していくんですが、ここからの展開がなかなか予想できません。仕事から帰った後、のんびりとした気分で読み進めるのに丁度良いペースです。難しすぎず、でも侮れない工夫が随所にありますね。 嘱託の身になると、こういった気軽に楽しめながらも内容のある作品はありがたい。つい続きが気になって、夜更かししてしまいました。推理小説好きなら、ぜひ手に取ってみてください。
2026年06月15日
プリースト、久しぶりに手に取ってみました。『不死の島へ』は昔から気になっていたんですが、ようやく読む機会に恵まれました。 著者が自らの人生における「鍵」だと語る本作、読んでみるとその言葉の重さが伝わってきます。物語の中で何度も繰り返される島との関係、そして主人公ピーター・シンクレアの執筆活動そのものが物語の根幹を成していく―その構造的な巧みさに唸らされました。 少々複雑な設定ではありますが、ゆっくりと世界に没入していくと、段々と魅力にとりつかれていきます。現実と虚構の境界線が曖昧になっていく感覚、執筆という行為がどんな意味を持つのか、そういった深いテーマが織り込まれているのに、決して難しすぎることもない。 嘱託の身だからこそ、こういう腰を据えた作品と向き合う時間が持てるのは幸せだなと改めて思いました。何度でも読み返したくなる、そんな一冊です。
2026年06月13日
最近、同年代の知人が資産運用の話を始めたので、この本を手にとってみました。正直なところ、貯蓄ゼロから1億円というタイトルには驚きましたが、著者のくらま氏が実際に経験したプロセスが段階的に説明されているのは分かりやすかったです。 「貯め方」「稼ぎ方」「増やし方」という三本柱の構成も、読者にとって迷いなく進めるように工夫されています。特に段階ごと(0から1000万、2000万など)にやるべきことが整理されているのは、実践的だと思いました。 ただ、嘱託社員として働く私のような立場から見ると、「手取り26万円」という設定は参考になるものの、実際に投資法を実行に移すには、ある程度の忍耐力と継続力が必要だなと感じます。金投資についての解説も興味深かったのですが、もう少し詳しく知りたかった部分もあります。 気軽に読める実用書ですが、魔法のような方法があるわけではなく、地道な積み重ねが大切だというメッセージは、むしろ安心できる印象を受けました。人によっては参考になる一冊だと思います。
2026年06月13日
文庫本のコーナーで目に留まったこの作品。ミステリーとしても、人間ドラマとしても本当に素晴らしい。孤独死の後始末という地味で辛い仕事をしている主人公グレイス・マクギルが、ミニチュア模型を通じて死者と向き合う姿勢に、まず心をつかまれました。 何気ない現場の共通点から未解決事件へとたどり着く過程は、緻密でありながらも読みやすい。スコットランドの古い街の空気感も漂ってきて、どんどんページをめくってしまいました。謎解きの爽快感もありますが、それ以上に、社会から忘れ去られた人々への優しい眼差しが印象的です。 後半の展開は予想を裏切る面白さ。犯人が誰かという純粋なミステリーの楽しさだけでなく、そこに至るまでの人間関係の複雑さ、時間が積み重ねてくるもの——そういった深みがある。気軽に読める文庫だからこそ、こういう傑作に出会えると嬉しい。ダークミステリーが好きな方なら絶対に後悔しない一冊です。
2026年06月12日
医療ミステリーというジャンルに惹かれて手に取った一冊です。悪魔だの謎の大型肉食獣だのという、一見ふざけたような設定なのに、これが実に綿密に構成されているんですよ。 天才医師・天久鷹央が、常識では説明のつかない事件を次々と解き明かしていく様は、まるで自分も謎解きの途中で引っ張られていくようなわくわく感があります。著者が現役医師ということもあってか、医学知識の説得力がしっかりしているんでしょう。ありえない容疑者という奇想天外な設定が、医学的な論理で見事に整合していく快感がある。 読み進めるうちに、最初は「こんなことあるわけないだろう」と思っていたことが、「ああ、なるほど」と膝を打つ。そういう喜びが詰まった作品です。文庫本のサイズも扱いやすいし、気軽に読み始められるのに、本格的な推理小説としての満足度もちゃんとある。嘱託の身で忙しない日々ですが、こういう一気読みできる良質なエンタメに出会えるのは、読書の楽しみですね。
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