本と珈琲の本棚
感想

定年前のこの歳になって、こんなに一気読みしてしまった本は久しぶりです。『火車』、本当に素晴らしい。 失踪した女性の謎を追う刑事の視点で物語が進むんですが、最初は婚約者がなぜ逃げたのか、その理由が気になってぐいぐい引き込まれていく。ページをめくる手が止まりませんでした。自分の人生経験があるからか、登場人物たちの背景にある事情が身にしみて理解できるというか、人間の弱さや絶望みたいなものがリアルに感じられたんです。 特に印象的だったのは、カード会社や借金という現代社会の問題を通じて、一人の女性がどういう人生を歩んできたのかが少しずつ明かされていくところ。ミステリーとしての面白さと、人間ドラマとしての深さが両立している。派手な展開はないけれど、その分、真実にたどり着いたときの衝撃が大きい。 文庫本という気軽さで読み始めたのに、山本周五郎賞受賞作というのも納得です。還暦を過ぎた今だからこそ、この作品の良さが余計に分かるのかもしれません。おすすめできる一冊です。

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