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本を読めなくなった人たち

本を読めなくなった人たち

稲田豊史 中央公論新社 2026年2月9日

感想

前作『映画を早送りで観る人たち』が提示した問題意識は興味深かったので、本著への期待は大きかった。読書におけるタイパ・コスパの欲望という主題は、現代のメディア消費を考える上で確かに重要だ。しかし、読み進むにつれ、やや物足りなさを感じずにいられなかった。 取材に基づくレポートという形式は悪くないのだが、「本が読まれない」という現象の記述に終始してしまい、その背景にある構造的な問題への掘り下げが浅い。なぜ人々はテキストから離れるのか、出版業界の変化とメディア環境の急速な転換がもたらす影響について、もっと理論的な考察があってもよかった。 また、新書という限られたページ数の中で多くの話題に触れすぎたためか、各章が唐突に感じられ、議論が十分に展開されないまま次へ進んでしまう。読者の具体的な声は貴重だが、そこから何を読み取り、どう解釈するのかという著者の思考過程がもう少し明確に示されるべきだった。 現象の報告としては機能しているが、評価の高い読書家として期待していた水準には、残念ながら届いていない。

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