lit_logの本棚
福音派ー終末論に引き裂かれるアメリカ社会

福音派ー終末論に引き裂かれるアメリカ社会

加藤喜之 中央公論新社 2025年9月19日

感想

アメリカ政治を理解する上で避けて通れない福音派という存在。本書はその歴史的形成と影響力の拡大を、終末論という視点から追ったものだ。 アプローチは興味深い。戦後アメリカにおいて福音派がいかにして政治的影響力を獲得していったのか、その軌跡を丹念に辿る構成は、確かに理解の助けになる。中絶、同性婚、イスラエル政策といった現代の主要争点がなぜ福音派の価値観と結びついているのかが見えてくる点は評価できる。 ただし、新書という限られた紙幅の中での叙述のため、やや表面的な記述に留まっているのが惜しい。終末論という潜在的な思想的動機をもっと深掘りしてほしかった。また、福音派の内部的な多様性についても、もう少し触れられていれば、より立体的な理解が得られたように思う。 現代アメリカ理解のための基礎知識を得るには十分だが、より深い思考へ導く洞察に欠ける印象。フリーランスとして時間に余裕がある身には、もっと読み応えのある一冊を求めてしまった。