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ギリシア人ローマ人のことば

ギリシア人ローマ人のことば

中務 哲郎 / 大西 英文 岩波書店 1986年3月20日

感想

古典を読み続けてきた者として、西洋文明の源流をどう理解するかは重要な問題だ。この新書は、ギリシアとローマの両民族がいかなる言葉で世界を捉えていたのかを、丁寧に掘り下げている。 印象的なのは、単なる言語学的分析に留まらず、思想と言葉の不可分な関係を明らかにしている点だ。民主主義、理性、法治国家といった概念が、どのような言語的基盤の上に成立していたのか。そうした歴史的・哲学的な文脈の中で、古代の言葉が生き生きとよみがえる。 著者の筆致は明確で、新書という限られた紙幅の中で、膨大な知識を見事に整理している。複雑な議論を追いながらも、各章の構成が論理的で読み進めやすい。フリーランスとして時間を融通できる身だからこそ、こうした思想的な深さのある本に時間をかけて向き合える喜びを感じた。 西洋古典への理解を深めたい、あるいは人文知の基礎を改めて問い直したいという読者にとって、これ以上ない一冊だろう。岩波の良心的な仕事が光る秀作である。

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